ノコギリヤシ

ノコギリ椰子は、北米大陸南東部に自生するシュロ科の植物であり、英名はソーパルメットといいます。
ノコギリ椰子の果実に含まれる成分が前立腺肥大症に効果があります。

前立腺は、男性の膀胱の出口(頸部)から尿道にかけて、尿道を囲むように位置しているクルミ大の臓器です。
前立腺には内腺と外腺があります。
 
前立腺肥大症は、尿道に近いほうにある内腺に小さな結節(肥大結節という)が生じ、その結節が大きくなり外腺を圧迫するため前立腺全体が肥大してくる病気です。
この肥大結節は、30歳代から生じ始め、50歳代で50%、70歳代では70%の男性に認められます。
 
前立腺肥大症の初期には、尿がなかなか出ない、尿に勢いがなくなり尿が足元にポタポタ落ちる、何度も排尿に行きたくなる、排尿に時間がかかるようになる、排尿時に強い力を加えなければならない、などの症状があります。
ノコギリ椰子エキスは、特にこれらの初期症状の改善や予防に効果的です。
 
前立腺が肥大する一因として、ジヒドロテストステロン(DHT)という男性ホルモンが前立腺に存在する受容体と結合する刺激があります。

DHTは、男性ホルモンであるテストステロンから酵素によって作り出されます。
加齢に伴いテストステロンがDHTに転換される割合が多くなると、中高年の男性では過剰のDHTの作用によって前立腺肥大が生じます。
 
ノコギリ椰子エキスに含まれる脂溶性の有効成分は、テストステロンが前立腺の受容体に結合するのを抑制します。
また、テストステロンをDHTに転換する酵素の働きも抑えます。
さらに、ノコギリ椰子エキスは、抗炎症作用と抗痙攣作用をもつため、アセチルコリンに拮抗して抗痙攣作用を発揮することで、膀胱から尿道にかけての狭窄を緩和すると考えられます。

ノコギリヤシの効能効果

前立腺肥大症の予防、前立腺肥大症に伴う症状の改善など。



ノコギリヤシの効能効果根拠

ノコギリ椰子エキスが前立腺肥大症に効果があったという臨床試験は、数多く報告されています。
 
たとえば1998年、アメリカにおいて50人の患者を対象にして、320mgのノコギリ椰子エキスを6カ月間投与した研究では、投与開始2カ月後より有意な症状の改善が確認されました。
 
ノコギリ椰子エキスと医薬品との効果を比較した研究も発表されています。
 
たとえば1995年、前立腺肥大症患者63人を対象にしてイタリアで行われた研究では、160mgのノコギリ椰子エキスを3週間投与すると、排尿症状などのスコアが有意に改善しました。
ただし、この研究では、同時に検討された医薬品のほうが効果的であるとされています。
 
1996年に1098人の前立腺肥大症患者を対象にしてフランスで行われた臨床研究では、ノコギリ椰子エキスが医薬品と同等の効果をもつことが示されています。
まず、320mgのノコギリ椰子エキスを6カ月間投与されたグループでは、3分の2の患者で前立腺症状のスコアや検査指標が有意に改善しました。

一方、医薬品を投与されたグループでも前立腺症状などが改善したが、男性機能に関するスコアが逆に悪化したという副作用が認められました。
 
2000年に報告された研究によると、合計2859人を対象にした13の臨床試験を検討した結果、ノコギリ椰子による効果が明らかに認められたといいます。

前立腺肥大症に対する試験

1.試験デザイン:オープンラベル試験

  • 対象:前立腺肥大症患者
  • 人数:42人
  • 投与量:320mg/日のノコギリヤシエキスを12ヵ月間投与。
  • 結果:残尿量、平均尿流速、最高尿流速などについて6ヵ月以内で改善効果がみられました。
    また、治療中副作用は認められませんでした。

2.試験デザイン:オープンラベル試験

  • 対象:前立腺肥大症患者
  • 人数:505人
  • 投与量:320mg/日のノコギリヤシエキスを3ヵ月間投与。
  • 結果:平均尿流速、最高尿流速などに対して改善効果がみられ、前立腺症状スコアも改善しました。

ノコギリヤシの摂取方法

膀胱・前立腺の症状を有する高齢男性がノコギリ椰子エキスを利用する場合、それらの症状が前立腺肥大症によるものであることを確認する必要があります。

たとえば、痛みを伴う残尿感が急に現れたのであれば膀胱炎が考えられ、排尿困難は風邪薬や胃薬の副作用としても生じます。
 
軽度から中程度の前立腺肥大症と診断されたとき、あるいは病気を予防するためにサプリメントを使用する場合、1日あたり200~320mgを継続して摂取します。
少なくとも1~2カ月摂取して効果を判断すると良いでしょう。

ノコギリヤシの注意する点

前立腺肥大症に対しては、病院での薬物療法や外科療法があります。
進行した病態に対してはこれらの治療法が有効であるが、勃起障害などの副作用もあります。
 
一方、ノコギリ椰子は、臨床試験において有効性と安全性が確認されており、前立腺肥大症の予防や治療に効果的です。
 
ノコギリ椰子の成分に対して、発疹などの皮膚症状や胃腸障害といったアレルギー症状や過敏症が現れることがあります。
これらの症状がみられたら使用を見合わせましょう。
 
一般的には、特に問題となる健康被害や副作用は知られていません。
また、他のサプリメントや医薬品との相互作用は報告されていません。

ただし、理論的に抗凝固剤などとの相互作用が推測されるので、念のため、何らかの医薬品を使用している場合には、主治医に相談の上、利用するようにしましょう。
 
なお、ノコギリ椰子の成分は、前立腺ガンの指標である血清PSA値には影響を与えません(つまり、ガン検診のためのデータを阻害しないので、問題なく利用できる)。



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