ファイトケミカル

人が生きていくためには酸素が必要です。
しかし、呼吸で取り入れられた酸素のうちの1~2%ほどが、活性酸素と呼ばれる科学的に不安定な分子になり、細胞を酸化させます。

活性酸素は、がんなどをはじめ様々な生活習慣病や老化現象など、体内でいろいろな弊害をもたらします。

一方、人体には活性酸素の弊害から身を守る抗酸化のための防御機構が備わっています。

抗酸化力を持つ酵素としては、スーパーオキサイド・ディスムターゼ(SOD)、カタラーゼ(CAT)、グルタチオン・ペルオキシダーゼ(GPX)などがありますが、これらの抗酸化力をもつ酵素の活性は、40歳を過ぎる頃から低下してしまいます。

そこで、活性酸素の弊害から体を守り、がんなどの生活習慣病を予防する対策が必要になります。

近年の研究により、野菜や果実といった植物性食品には、さまざまな抗酸化物質があることがわかっています。
これらの抗酸化物質を、ファイトケミカルと呼びます。

野菜や果物などの植物性食品を多く摂取することで、がんなどの生活習慣病になる率をおさえることが報告されています。

その原因を調査した結果、植物性食品に含まれている抗酸化物質(ファイトケミカル)が、大きな効果を発揮していることがわかりました。

ファイトケミカルとは、植物由来の抗酸化栄養素のことです。
ファイト(phyto)とはギリシャ語で植物、ケミカル(chemical)は化学分子という意味です。

ファイトケミカルの日本語訳は、その働きから考えて「植物由来の抗酸化栄養素」という表現になるでしょうか。

なお、日本語でフィトケミカルという表記を見ることもありますが、英語としての正確な発音はファイトケミカルです。

近年の研究により、植物の色や香りの成分であるファイトケミカルが見つけられ、それぞれが強力な抗酸化物質として働くことが確認されています。

例えば、赤ワインやお茶のポリフェノール、ブルーベリーのアントシアニン、トマトのリコピン、大豆のイソフラボンといった分子です。

なお、ファイトケミカルは一般的にポリフェノールと呼ばれることもあります。

ポリフェノールというのは、2つ以上のOH(水酸基)がついたフェノール環構造を持つ分子の総称です。

ファイトケミカルの中には、ポリフェノールの構造をしたものもあればそうでない物もあります。
したがって、植物に含まれる抗酸化栄養素の総称は、ポリフェノールではなくファイトケミカルのほうが適切といって良いでしょう。