セントジョーンズワート
セントジョーンズワート(和名:セイヨウオトギリソウ)は、軽症から中等度のうつ病やうつ状態に対して医薬品と同等の効果があり、副作用の発現頻度は医薬品よりも低いことが示されています。
セントジョーンズワートは、単独で利用する場合には、安全性は高いですが、肝臓での薬剤代謝酵素に影響を及ぼし、他の医薬品の血中濃度を変化させるため、医薬品と併用する際には注意する必要があります。
日本やアメリカではサプリメントであるが、ドイツやオーストリアでは、処方箋の必要な医薬品として扱われています。
うつ病では、何らかの原因により、脳内の神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンの量が減少しています。
セントジョーンズワートには、ヒペリシンやヒペルフォリン、フラボノイド系ファイトケミカル、タンニン類などがあります。
単独の成分が抗うつ作用をもつのではなく、複数の有効成分の相互作用により、セントジョーンズワートの効果が得られると考えられます。
セントジョーンズワートの効能効果
- 不安症・神経症、軽症から中等度のうつ病・季節性(冬期)うつ病など。

セントジョーンズワートの効能効果根拠
これまでに行われたたくさんの臨床試験において、セントジョーンズワートが軽症から中等度のうつ病に対して、効果のあることが確認されてきました。
具体的には、23の臨床試験に参加した1757人の患者において、抗うつ効果が報告されています。
これらの臨床試験における平均的な投与期間は、4~8週間です。
8つの臨床試験では、セントジョーンズワートの効果が、医薬品(抗うつ薬)と比較されており、セントジョーンズワートが医薬品と同等の効果をもつことが示されました。
ただし、重症のうつ病患者を対象にした臨床試験では、セントジョーンズワートの効果は認められませんでした(同じ臨床試験において、比較のために用いられた医薬品のほうも、効果は認められなかった)。
セントジョーンズワートは軽症から中等度のうつ病に効果があるサプリメントといえます。
セントジョーンズワートの摂取方法
セントジョーンズワートは、即効性はないため、少なくとも2~3週間程度、継続して摂取します。
標準化された製品は、ヒペリシンを0.3%程度、あるいはヒペルフォリンを3~5%程度含むように調整されています。
1日あたり500~900mg摂取する。1800mgまで増量可能。
セントジョーンズワートの注意する点
セントジョーンズワートによって、日光に敏感になり日光が当たった部分に発疹や発赤などの皮膚症状が出る日光過敏症を生じることがあります。
そのため、強い紫外線などを浴びないように注意する必要があります。動物実験では、日光過敏症は、セントジョーンズワートの投与量の増加に比例して生じています。
なお、日光過敏症というのは特殊な病態ではなく、一般的な医薬品などで生じる場合や、原因不明のケースが多く認められます。
また、日光過敏症ではなく、アレルギーのため発疹や皮膚のかゆみなどの症状が現れることもあります。
以上のような場合、サプリメントの摂取量を減らして様子をみるか、あるいは中止しましょう。
セントジョーンズワートを使用する際の注意点は、いくつかの医薬品との相互作用をもつことです。
これは、セントジョーンズワートの成分によって、肝臓の薬物代謝酵素であるチトクロームP450、特にサブタイプのCYP3A4とCYP1A2が誘導され、同じ酵素によって代謝される他の医薬品の血中濃度に影響するために生じます。
また、SJWは、薬剤の排泄を調節するP糖タンパクにも影響を与えます。
その結果、経口避妊薬(ピル)や抗HIV薬(インジナビル)、ある種の免疫抑制剤(シクロスポリン)や抗不整脈薬、気管支拡張薬(テオフィリン)、血液凝固防止薬(ワーファリン)などと併用すると、それらの効果を減少させることがあります。
また、一部の抗ガン剤との相互作用も知られています。
したがって、何らかの医薬品を服用している場合、セントジョーンズワートを併用する前に必ず主治医に相談しましょう。
セントジョーンズワートと併用できない医薬品として、抗うつ薬の一種であるモノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬(塩酸サフラジン)があります。
一般に、セントジョーンズワートは、抗うつ作用のある医薬品とは併用しないようにします。
たとえば、医療現場でよく用いられるSSRIという種類の抗うつ薬と併用すると、過剰症を引き起こす可能性があります。
このように、セントジョーンズワートは、他の医薬品と併用する際には注意が必要です。
しかし、うつ病に対しては医薬品と同等の効果があり、医薬品よりも副作用は少ないのも確かなので、セントジョーンズワートを上手に利用することで、効果を得るようにしましょう。
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