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さつまいも
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スーパーの青果売り場。そこに並ぶさつまいもは、もはや単なる根菜ではありません。
『紅はるか』、『シルクスイート』、『鳴門金時』……。
それぞれのラベルの下には、ワインやスペシャルティコーヒーと同じように、固有の「テロワール(風土)」と、気の遠くなるような「品種改良の歴史」が隠されています。
「焼き芋にした時、指がベタつくほどの蜜が出るのはどれ?」
「昔ながらの、喉が詰まるような栗っぽいホクホク感が恋しい」
その切実な願いの答えは、すべて「品種(DNA)」の中に書かれています。
私はこれまで、全国の圃場で育種家たちの情熱に触れ、何百という品種の断面を見つめてきました。彼らは、数万、数十万という種芋の中から、たった一つの「奇跡の味」を探し求めています。
ねっとりとした甘さの裏には「デンプンを麦芽糖に変える酵素」を強化する執念があり、ホクホクとした食感には、日本の食卓を支え続けた「高系14号」という偉大な母の記憶が刻まれています。

この記事は、単なる品種リストではありません。
私の舌が記憶する「官能評価」と、系譜という「歴史」、そして美味しく食べるための「科学」を掛け合わせ、あなたが今日選ぶべき最高の伴侶(パートナー)を導き出すための羅針盤です。
さあ、皮の下に隠された、甘美な物語のページをめくりましょう。
品種選びで迷子にならないために。
現在流通している主要品種を、その「食感」と「甘さ」という2つのベクトルでマッピングしました。
なぜその位置にあるのか、品種の「個性」を決定づける座標です。あなたが求めている味はどこにありますか?

| 分類(食感) | ねっとり(粘質系) | しっとり(中間系) | ホクホク(粉質系) |
| 特徴 | スプーンで食べるスイーツ感。 冷めても甘みが強い。 | 絹のような滑らかな喉越し。 新時代のスタンダード。 | 栗のようなほぐれ感と香り。 昔懐かしい味わい。 |
| 超高糖度 | べにはるか 安納芋 ふくむらさき(紫) | ||
| 高糖度 | 紅まさり | シルクスイート ひめあやか | 紅あずま 鳴門金時 コガネセンガン |
| さっぱり | パープルスイートロード(紫) |

近年の「第4次焼き芋ブーム」を牽引する、熱狂の中心地です。
加熱するとデンプンが糊化(こか)し、β-アミラーゼという酵素が活発に働いて大量の「麦芽糖」が生成されます。水分量が多いため、焼くと皮の裂け目から蜜がキャラメルのように溢れ出します。

「最近の焼き芋は甘すぎて、すぐに飽きてしまう」
そんな通(ツウ)なあなたにこそ、再評価してほしいカテゴリーです。水分が少なく、加熱するとデンプンの粒子がホロホロと崩れる「粉質」。喉が少し詰まるような感覚こそが、芋を食べているという至福の実感をもたらします。

食感の概念を変えた革命児から、目でも楽しめるカラフルな品種まで。さつまいもの多様性は、あなたの食卓のパレットを広げます。
第5章:さつまいもの主な品種一覧 [#sb52dacd]
紀州金時、土佐紅金時、紅あずま
安納芋、シルクスイート、紅はるか
高系14号、鳴門金時
第6章:*さつまいもの種類と特徴 [#q494587f]
皮は赤褐色で肉は淡いクリーム色です。
選ぶときは傷やでこぼこがなく、皮がむけていないものを選ぶ。
色がさえ、ツヤのあるものが良質。
皮は赤褐色で肉は淡いクリーム色です。
甘みが強く、粘質でホクホクしています。
ずんぐりしている形が特徴です。

皮は赤褐色で肉は淡いクリーム色です。
比較的ほっそりとし、繊維が強くなく、質も安定しています。
皮は深みのある紅色で肉は淡黄色です。
形は高系14号と紅赤の中間といったところです。
貯蔵性がよい。
名の通り皮が鮮やかな赤で、肉は加熱すると濃い黄色になります。
形は細身タイプで甘みが強く、やや粘りのある粉質です。
皮の色は淡い茶色で肉は白っぽい黄色です。
見た目はよくありませんが、甘みがあり、ホクホクして美味しい。

皮は灰褐色を帯びた紫色で、肉は濃い紫色です。
加熱すると肉色の紫が鮮やかになります。

品種の個性を知ったら、次は「扱い方」です。
間違った調理法は、育種家たちが積み上げた努力を台無しにしてしまいます。ここでは科学的なアプローチで解説します。
食材と調理法の相性(マリアージュ)が重要です。
「レンジでチンしたら、全然甘くなくてパサパサだった…」
そんな悲しい経験はありませんか?
さつまいもの甘さは、生の状態には存在しません。加熱によってデンプンが「β-アミラーゼ」という酵素の働きで麦芽糖に変わることで初めて生まれます。
この酵素が最も活発に働くのは「60℃〜70℃」の温度帯です。
電子レンジで急速加熱すると、この「甘くなる温度帯」を一瞬で通過してしまい、酵素が失活して糖が作られないまま火が通ってしまいます。
甘みを最大限に引き出す正解は、オーブンや蒸し器でじっくり時間をかけて調理することです。
時間がない現代人のために、科学的に理にかなった妥協案を伝授します。
スーパーで最高の一本を選び抜くためのチェックポイントです。

さつまいもは熱帯原産。寒さが大の苦手です。
冷蔵庫(10℃以下)に入れると「低温障害」を起こして腐りやすくなり、味も落ちて内部が黒ずみます。
読者の皆様から寄せられる「素朴な疑問」や「不安」について、分類学者としての視点でお答えします。
A. ぜひ食べてください。栄養の宝庫です。
皮の鮮やかな赤色は「アントシアニン(ポリフェノールの一種)」によるもので、抗酸化作用があります。また、皮の近くにはカルシウムや食物繊維も豊富。
ただし、天ぷらやきんとんで「色を鮮やかに仕上げたい」場合は、皮を厚くむくのがセオリーです。普段の焼き芋や煮物なら、皮ごと食べるのが最も栄養効率が良い食べ方です。
A. 「ヤラピン」という成分です。新鮮な証拠です。
切った時に滲み出る白いベタベタした液は、さつまいも特有の成分「ヤラピン」です。これには緩下作用(腸の動きを助ける)があり、食物繊維との相乗効果で便秘予防に役立ちます。黒く変色しやすいので、気になる場合は水にさらして落としますが、食べても全く問題ありません。
A. 食べられます。(じゃがいもとは違います)
じゃがいもの芽には毒(ソラニン)がありますが、さつまいもの芽には毒はありません。
ただし、芽が出るということは、芋本体の栄養が芽に使われているということ。味や食感は落ちています。芽の部分を少し深めに取り除いて、早めに使い切ることをおすすめします。
A. 冷やして食べるのが正解です。
さつまいもはカロリー自体は高めですが、GI値(血糖値の上昇スピード)は白米より低めです。
さらに、一度加熱したさつまいもを「冷やす」ことで、デンプンの一部が「レジスタントスターチ(難消化性デンプン)」に変化します。これは食物繊維と同じような働きをし、カロリーの吸収を抑える効果が期待できます。ダイエット中なら「冷やし焼き芋」が最強のおやつです。
A. 「異臭」「柔らかさ」「カビ」で判断します。
以下のサインがあったら、残念ですが廃棄してください。
さつまいもの世界は、知れば知るほど奥深い、魅惑の沼です。
今度スーパーで見慣れない名前のさつまいもを見つけたら、それは新しい物語との出会いです。
ぜひ、ラベルに書かれた「品種名」を確認して、その個性を味わってみてください。
「名を持つものは、物語を宿す」
このチャートが、あなたの食卓に美味しい笑顔をもたらす羅針盤となることを、心から願っています。
榊 朔(さかき・はじめ)
1984年、静岡県浜松市生まれ。父は柑橘の育種家、母は園芸店主という環境に育つ。幼少期から畑と温室で「品種」の差異に魅せられ、大学では分類学と遺伝学を専攻。
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